それで誤った暑さ対策が横行してしまうわけ;;
液体の水が蒸発するときに周囲から熱を奪う気化熱はよく知っているのに、気体の水が結露するときに持っていた熱を放出する凝縮熱のことをまるで知らない。
水をまいたところで熱が水蒸気の形に置き換えられるだけなので、無風や閉鎖された空間では熱中症対策にはほとんどなりません。
気化熱で涼を得るには、その場から水蒸気を運び去る仕組みが必要なんですよ。
風が吹くことで水蒸気をその場から遠ざけ、より乾いた空気で満たすことができれば効果はあります。
しかし日本の夏はそもそも空気が非常に湿っており、気化熱による冷却が上手く機能しない悲惨な環境です。
ではなぜゲリラ豪雨や夕立で気温が下がるのでしょうか?
「大量の冷たい水がまかれたから」というのも間違いではありません。
重要なのは大雨をもたらす「積乱雲」の構造にあります。
上空10000mを超えることもある対流性の雲、積乱雲。
非常に厚みのある雲が太陽光を遮って地上を日陰にします。
積乱雲に当たった太陽光は反射して宇宙空間へ熱を逃します。
雨が落ちてくる間に空気中の熱を奪います。
地面がずぶ濡れになってさらに熱を奪います。
蒸発により発生した水蒸気がさらに積乱雲を発達させます。
このとき雲の中では凝縮熱によるエネルギーで強い上昇気流が発生しています。
上昇気流が積乱雲を成層圏にまで発達させます。
積乱雲の頂点で凝縮熱は宇宙空間へ赤外線の形で放出されます。
この一連の流れによって積乱雲は地上の温度を下げているのです。
積乱雲がないのに地上で打ち水をしても……発生した大量の水蒸気は周辺にとどまり、かえって蒸し暑さを増大させ熱中症のリスクを高めるだけです。
庭に打ち水をすると、発生した水蒸気が窓の隙間から侵入して室内をも不快にさせます。
簡易的なドライミストや冷風扇も同様です。
………
本当にエアコンを使うしかないのですよ……
なぜエアコンが冷却に有効なのかも簡単に考えてみましょう。
窓を閉めた屋内は外気と断熱された状態です。
エアコンの室内機の熱交換器は気化した冷媒により低温に保たれています。
室内の熱をそれで奪い、気体となった冷媒が室外機へ運ばれます。
室外機が冷媒を圧縮すると熱を出して液体に戻ります。
それが室内機へ運ばれて部屋の温度を下げます。
冷房のメカニズムは完全に理解されているはずなのに、どうしてエアコンの代わりに打ち水、濡れタオル、冷風扇を持ち出すのか…………
それだけ理解のない人がいるということです。
2021/08/31
打ち水、濡れタオル、冷風扇……気化熱はよく知っているが凝縮熱を理解していない
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿