2014/11/05

大人は大変だと吹き込むのは巧妙なビジネスである

「大人になると大変だよ」
子供のころからそう教えられてきた人は多いと思う。

素直な人はそれを真に受け、大人は大変だ、苦労するんだと思い込む傾向がある。

そして人生に生きがいを見出すよりも先に苦労することに圧倒され、
成長を拒んだり、進路や目標を見失ったりしてしまう。

まだ生きているうちから自分がいつか老いて死ぬことを考えさせられ、
途方もなく先の話をいま聞かされ、これからどうしろというのだろうか。

実はそれが一種の「生存競争」、
人間っぽくいえばビジネスの関わる重大な事項なのだ。

自分の能力では出世が難しいとすれば、
他人を失脚させることに期待するほうが容易である可能性が出てくる。
絶対的な得点では劣っても、相対的に他人より優位であればよく、
それは結果的に勝利し、成功を収めていることになるからだ。

自由気ままに人生を楽しんでいる子供に向かって
「いま遊んでいると大人になってから苦労するよ」
と吹き込むのはそういうことなのである。

ただ軽い気持ちで言うのは社交辞令的でいいかもしれないが、
脅迫を込めて言うことには問題がある。

心の正直な人は、子供は楽しいが大人は楽しくないのだと判断し、
いま楽しいと感じている事柄にさえむなしさを覚え、
常に未来のことを心配するようになってしまう。

「大人になってから苦労する」という脅しは、
実際の大人になった時期ではなく、「今」に対して作用する。
人にいつも先のことばかり考えさせるように仕向けるというのは、
まさに「今」を揺るがせているということである。

当たり前のことではあるが、「未来」を正確に予見し、その通りにすることは誰にもできない。

しかし「今」を打ち壊し、混乱や恐怖に陥れることはできる。

「今」を台無しにすれば「未来」も失われたも同然なのである。





「大人になると大変だよ」という忠告に反発して
軽度の非行や反社会的な行動に走った子供のほうが、
結果的に多くを学び、経験し、現実的な生きる能力を身につけている場合がある。

ところが真面目で、素直で、何でも人の言うことを聞く子供は、
与えられるものによってのみ感じ、考え、判断し、行うことしかできず、
偏った経験と非現実的な思考力で満たされてしまうことが多い。

結果的にどちらが幸せだといえるだろうか。

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