2020年1月17日金曜日

PCケースのエアフローがちょっとわかってきた

マザーボードのオーディオ回路は熱源から離れた基板の端にありますが、グラフィックボードと電源に挟まれているため高温になりがちです。ESS DACを搭載しているものはさらに発熱が増える可能性もあります。


リアに14cmまたは12cmのファンを1つ、フロントに14cmファンを2つ、あるいは12cmファンを3つ標準搭載したPCケースが多いですが、空冷のCPUクーラーを使用する場合はそれでほぼ完璧なエアフローが成り立っていると考えてよさそうです。


サイドパネルを開放してリビング用の扇風機を向けるのは効果的ですが、異物が飛び込んで故障の原因になったり、ホコリに対して無防備となって掃除の手間が増えたり、うっかり手や足を突っ込んで怪我をしたりする恐れがあります。


サイドパネルを開放しても扇風機の風を当てない場合は思いのほか冷えないことがあります。フロントファンからの吸気はサイドパネルが閉じられているからこそケース内を直進し、勢いを保ったままリアファンまで駆け抜けることができるので、そこが開いているとPCパーツから熱を奪う前にサイドへ風が抜けてしまい、十分な冷却効果を得られなくなるためです。


サイドパネルを開けて扇風機の風を当てるのは決して「効率的」ではありませんが、風量が非常に多いためPCパーツの熱を勢いよくかき回し、ケースの外へ拡散することができます。



PCパーツは人体と違って風を当てたから涼しくなるものではないんですよね。
出口をなくして風を送り続けたらケース内を空気が循環するだけになって温度はほとんど下がらなくなるはずです。

パーツからの熱でケース内の空気が温められるというか、単に熱が移動するだけなんですよ。

その熱を外に逃さずにひたすら循環させていたら……冷えるわけがありません。


冬の暖房をつけたままの室内をどうすれば寒くできるかを考えてみましょう。

窓を閉めたまま扇風機を回しても室温は下がりません。
人は扇風機の風を浴びれば寒く感じますが、室温は下がらないのです。


これを「熱設計の素人がやりがちな失敗」と聞いたことがあります。


非常に論理的というか物理的な話題なのに、なぜか想像や印象だけで判断され、内容よりもインパクトのある論調や言説が支持されるのが不思議ですね……

PCは常に熱源が存在しているため「冬の暖房のついた部屋」と同じように考えることができます。
一番いいのは暖房を止めることですが、PCはそうはいきません。


温度を下げたければケースの外へ熱を排出するしかないのです。



80年代のCPUはクロック数が低く発熱も少なかったため、ファンもヒートシンクもついていませんでした。
90年代になって性能が高くなると、CPUから効率よく放熱するためのヒートシンクが搭載されるようになりました。
「CPUクーラー」という独立した冷却ソリューションが登場するのはそのあとです。

ケースの排気ファンと電源のファンによる空気の流れがヒートシンクの熱を移動させていました。

それだけでは冷却が追いつかなくなり、やがてヒートシンクにファンが直付けされるようになりました。


たとえ小さくて狭いケースであってもNoctua NH-D15のような巨大なクーラーを搭載可能なら、熱は効率よく外へ排出される流れになります。

注意しなければならないのは、ケースが大きければ大きいほど空気を移動させるのに強力なファンが必要になるということです。
ケース内の空間に比例して熱容量が大きくなり、より多くの熱を溜め込んでしまうわけです。

ワンルームより戸建てのほうが空調の負担が大きいことに似ていますね。

大きなケースを冷やすには、強いエアフローが要求されるということです。
エアフローが足りないと、小さなケースよりも熱がこもってしまいます。
しかしケースが小さいほど騒音が大きくなる傾向があります。

6年前からフルタワーのケース(NZXTのPhantom)を使っていたのですが……
天面の20cmファンが排気しているのみで冷却不足に陥っていました。
i7 4770SとGTX760でしたがゲームをするとかなりの発熱があります。

パーツ選びの際に店員はサイドフローの空冷クーラーを勧めてくれたのに、
私は興味本位で「120mm簡易水冷」を選んでしまいました。
天面の20cmファンと簡易水冷の12cmファンしかつけていなかったので、
ケース内部にかなりの熱がこもり、真夏には電源が落ちることもありました。

エアフローのことを何もわかっていないだめな自作PCになっていたのです。


PCをケース内に構築しても、ベンチ台のような開放された環境に置いても、
ヒートシンクの表面積は変わりません。
熱交換はヒートシンクを含めてPCパーツの「表面」で起こります。

ベンチ台で運用する場合は30cm扇風機などの「PCファンとしては規格外」の強力なエアフローが可能になります。
ヒートシンクの表面で起こる熱交換が扇風機の風によって促され、よく冷えるということです。
ベンチ台でも「無風」では冷えにくくなります。
それでも温められたヒートシンクからの放熱により上昇気流が生じ、熱交換は非効率ながら起きています。

PCを冷却するには単なる「開放された空間に置く」のはあまり有効ではなく、
「開口部の制限された空間でいかに熱交換を促すか」を考えることが重要であるとわかります。

PCパーツの熱は主にその表面とヒートシンクからまとめて放熱する構造で、
隣接する「空気」に移動した熱が気温を上昇させることで結果的に冷却される仕組みになっています。
そうして温められた空気をできるだけPCパーツから素早く遠ざけることが効率的な冷却の流れとなります。

PCパーツの熱は空気に移動するだけで、「消えた」わけではないのです。

開放された空間で適当な方向から風を当て続ける場合、
温められた空気の一部をPCパーツへ「再循環」させる流れができてしまうため、
ケースにより「断熱」した状態でエアフローを設計したほうが冷える場合があるということです。
これがどうも感覚的に理解しづらい部分ではあるのですが、
PCパーツの熱はその場から消えるのではなく、最終的に気温を上昇させているだけである
という基本的な熱力学の仕組みを知る必要があります。

エアコンによる冷房があれば実用上は難しく考える必要はないのですが、
部屋を換気することしかできない環境の場合はエアフローは非常に難しい課題となります。




またエアフローとは直接関係ありませんが、重要なことなので余談ながら書いておきます。

それは冬に起こります。

自作であれメーカー製であれパソコンの動作温度は10℃から30℃あたりが想定されていますが、
冬の室温が10℃を下回るような寒さでは起動に失敗する場合があります。
シャットダウンせずにつけっぱなしにしておくか、あらかじめ暖房で部屋を温めておかなければなりません。

「電源は冬に壊れることが多い」というのがよくわかりました。

冬に気をつけるべきは低温だけではありません。

加湿による結露が深刻です。

加湿器や石油ストーブに水を張ったヤカンや鍋を置いて空気の乾燥を防ぐのはいいのですが、
問題は暖房を切ったあと気温が低下した際に起こる結露です。

PCパーツは金属部分がむき出しになったところもあり、
熱伝導率の高い銅やヒートパイプが使われています。

その表面に結露が発生しやすいのです。

水平についているグラフィックボードのファンの軸受に水がたまり、
ファンの動作がおかしくなることがあります。

回らなくなったり、フル回転のまま制御ができなくなったりします。

ま…まさか空気中の水蒸気が結露したものによってPCパーツが壊れるとは;;

冬の加湿も考えものですね……



さて、話をもとに戻して。




底面ファンをつけないほうがPC内のホコリが少なくなっているように見えます!

不思議なことに底面ファンの羽根の上に多くのホコリが積もっていたのです。
もしかするとケース内で風が循環し、サイクロンクリーナーのようにホコリを溜め込んでしまう流れができていたのかもしれません。

掃除機はできるだけ吸ったホコリを外に出さないことが重要ですが、
PCケースはホコリをさっさと排出することが求められます。

だからフロントからリアへ一直線のエアフローにすればホコリも一直線に「出ていく」のではないでしょうか??

想像というか状況から推測しています……




ゲーム用途ではCPUよりもグラフィックボードの温度のほうが高くなる傾向にあります。

1つのシロッコファンではなく2つのファンを搭載したグラボの熱は、一方はケース背面、他方はケース内部に向けて排出されます

フロントファンからの一直線の送風はグラボの排熱に一役買っている…?

メッシュの天板やサイドパネルを開放したケースで運用するほうが冷却に有利であるかのように思われるかもしれません。
しかし開口部の多いケースは中の気圧を保つことができず、勢いのある排気が難しくなります。
意外に高温の空気が滞りやすく、冷えにくい環境になりがちです。


どうしたって最終的にケースの熱を「外」へ出さなければPCパーツを冷やすことはできません。

エアフローというのはその手段を考えることであり、「密室でも扇風機の風を浴びれば熱中症を予防できる」といった人体の都合とは事情が異なります。

風の出入り口──熱交換に必要な仕組みをよく考える必要があるのです。

もちろんケースバイケースです。

トップに水冷のラジエターを設置している場合は天板を開けなければなりません。




「GPU」と「CPU」はかなり熱に強いパーツなのですが、
メインメモリ、VRAM、コンデンサ、それに「端子」が先にイカれてしまうことが多いです。
ようするに熱源そのものより周辺コンポーネントが熱に弱いということです。
だから水冷で局所的に冷やすアプローチより、ケース内全体のエアフローを考慮することがとても重要になります。
両立できれば水冷はとても有効であり、見た目もかっこよく仕上げられるので非常に魅力的です。

80℃や90℃でも「動作する」かもしれませんが、高温が続けば確実に寿命を縮めます。

ビデオカードのGPUは生きていても、ビデオメモリや映像出力端子が死ぬことがあるんですよ……
オンボードサウンドも高温でコンデンサが故障し、機能しなくなることがあります。
もちろんファンも壊れやすい部位ですし、ホコリの影響を一番強く受けます。

経年の温度変化や振動でヒートシンクが浮いたり外れたりすることもあり、
故障部位を見てから基本的な設計の悪さに気づく場合もあるようです。




お部屋のエアフローも2つ以上の窓を開けることがポイントです。

エアコンの冷房を利用できるのなら、換気以外で窓を開ける必要はありません。

エアコンなしでエアフローを考える場合は1つではなく2つ以上の窓を開けることが有効です。

部屋の窓が1つしかない場合でも、「窓」と「人が出入りするための扉」の2つを開けることができます。
また「引き違い窓」は2枚のガラス戸の両側を開けると2つの窓を開けたようにみなせます。

複数の窓が開いていると空気の出入り口ができて効果的に換気されます。

やってはいけないのは、窓を閉めた部屋で換気扇だけを回し続けることです。

窓を締め切った部屋でも換気扇を回して「排気」し続ければ外へ熱が出ていくように思われるかもしれませんが、
換気扇によって部屋の気圧が下がると外の気圧から押し戻される力がはたらくため、
換気扇の前後を空気が行ったり来たりするだけになってしまいます。

(厳密には違いますが)ファンの「静圧」というのは、
部屋の内気をファンによって押し出す(吸い出す)力と、外気から押し戻される力が釣り合った状態のことを表しています。
このままいくら回し続けてもファンの性能の限界に達しているため換気が進まなくなります。

換気扇とは別に1つ以上の窓を開けておくことがとても重要なのです。




水冷については、打ち水のように気化熱を奪って冷却するものではないし、
絶えず下水に流して冷却し続けるものでもありません。
循環させず下水に流すのはかなり理想的だとは思いますが……

水冷は熱の移動手段が「液体」であるというだけで、
最終的な放熱はラジエター(≒ヒートシンク)から行う仕組みになっています。

熱の媒体が循環するのが空冷との違いですね。

空冷は銅やアルミなどの金属を「伝導熱」が移動するのに対し、
水冷はチューブ内を流れる液体によってそれが運ばれます。

液体は金属より比熱が大きく、温まりにくく冷めにくい性質があります。

水冷のクーラー(水枕)を熱源に接触させることによって比熱の大きい液体が熱を奪い、
液体の温度が上がり、ポンプにより循環し、ラジエターのファンから放熱させます。

液体は同じだけ熱量を得ても金属より温度が高くなりません。
しかし金属より温度が下がりにくいという特徴をあわせ持ちます。

水冷のクーラーが正常に機能している場合、
温度の急上昇と急低下が起こりにくいため、システムの動作速度への影響が抑えられます。
ラジエターとファンの性能が十分であれば、安定した運用をしやすいということです。

ところが高温になった液体を冷却する能力が不十分であれば、
比熱の大きさが災いして、空冷よりも温度の高い状態にさらされてしまうということでもあります。

高温が続けばポンプにもチューブにも負荷がかかり、
圧力の変化により「エアを噛む」と水冷クーラーは一気に機能を失います。

溶接で形成されている空冷クーラーのヒートパイプとフィンの構造と違い、
接合部やポンプが完全には密閉されていない水冷クーラーは扱いが多少難しいです。
「メンテナンスフリー」といってもチューブやパッキンの劣化は起こるし、
ポンプにも寿命があります。


もちろん「冷風扇」なんか使ったらダメですよ!

水が蒸発する際の気化熱を奪う原理なのですが、熱が「水蒸気という形に置き換えられただけ」で熱そのものが消えているわけではないからです。
室内の湿度が非常に高く蒸し暑くなり、夜になって気温が下がると水蒸気が「結露」し、その際に蓄えられていた熱を放出することになります。
熱の再放出による蒸し風呂のような状態は一晩中続き、本来ならばもっとも気温の下がるはずの明け方になっても地獄のような暑さを味わうことになってしまいます。

物理学の初歩的な教養があればわかるので、絶対に冷風扇でPCを冷やそうとしないでください。
「気化熱」という言葉だけが独り歩きし、「熱はどこへ行ったのか」を無視している人が多すぎます。

水蒸気はもっとも身近でもっとも強力な温室効果ガスであるといっても過言ではありません。


エアコンが利用できない場合、部屋の複数の窓を開け、サーキュレーターで換気することが部屋の熱を逃がす最善の方法です。



「サーバーに使われるパーツは壊れない」と思っている人が多いですが、
サーバーは「壊れる前に点検や交換をする」から壊れないだけで、
決して「壊れない」わけではありません。

壊れてから対応するという運用方法ではないのです。





Noctua1つ分の価格で2つ買えそうなFractal Designの14cmケースファンはおすすめです。
とてもきれいなホワイトアウトのフレーム・ブレード・ケーブルは涼しげに見えます。
かなり静音に特化した設計で風量も静圧も強くはありませんが、振動と騒音がとても少なく、
防音性の高いDefine R6では本当に静かに運用できます。

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